そういえば

ZARDの人が亡くなられてしまいましたね。もう結構経ちますが。ZARDのファンとか言うわけではないので、惜しい人を亡くしたとかそういうんじゃないですが、日本の音楽シーンにそれなりに名を刻んだ形ではあると思います。本人がどれだけ歌唱力あったとか作詞能力がとか楽曲のよさがとかはおいておいて、とにかく日本人のそれぞれのライフステージになんらかの形は残したと感じるのですよ。


ZARDが最も売れていた時期はドラマやCMでバンバン使われカラオケで歌われ、街中のスピーカーからいつも聴けたように感じます。私に関してはZARDのイメージはポカリスエットのCMで、「揺れる思い」が使われていたと記憶しています。それは逆にポカリスエットのイメージとしても私には付きまとっており、スラムダンクを初期から見ていた私にとって「君が好きだと叫びたい」がそのイメージにあることと同時に、「マイフレンド」がスラムダンクのイメージだという人も多いのではないでしょうか?


人のイメージというのはとても強いもので、「Jazzはおじさん(お金持ちとかに置き換え可能)が聴くもの」とか「パンクは汚い」とかそういう先入観にも似た、人間の行動を支配する一要因となりえます。ヒットすることと音楽性の是非は問いませんが、ヒットした商品のイメージをそれだけ強く印象付けたその力はとても強いと感じます。その意味で、時代のイメージであるとか世の中に溢れる何かのイメージと重ねられるものというのは人々にそれだけ認知されたもので、広く浸透していたなぁということで、ZARDに関しては日本の文化(サブカル?)に少なからず影響を与えていたのではないでしょうか。


そうなると、私自身一応音楽に優劣をつける立場でもスタンスでもないのですが、大人から子供までこれだけ幅広くイメージを定着させた音楽というのはとても大きい存在であったのではないでしょうか。そして、その文脈において、今聴かれるようなチャートに出ているアーティストがあまり元気が無いなとも感じるわけです。私にはそれが「誰でも向け」に作られているか「子供だまし」かという部分にあるのではないかなとふと思ってしまったりもします。


子供向けの歌とかNHKみんなのうたなんかに使われる歌が「子供向け」といいつつも、実は大人が聴いても良いものであったり、大人向けのものであったりする事は多々あると思います。逆に「子供向け」とされていても、それが子供に向けて本気で作られているものは大人にも楽しめると感じるのです。絵本なんかはその典型で、近年大人が絵本を読むというのが話題として上がっていますが、これなんかは子供に世の中を説明するのに苦慮した絵本が実は大人も幅広く読めるという実例だと思います。子供だってこの世を生きる人間であることに変わりはありませんし、世の中のことを何とか伝えようとしている絵本を大人が読んでも面白いと感じるのはむしろ当たり前のことだと思います。子供に対して「子供だから」と線を引くことはある意味で必要ですがある意味では必要ないことだとも思うのです。その「ある意味」を間違ってはいけないということではないでしょうか。


さて、ZARDは比較的子供から大人まで口ずさまれたアーティストだと思います。私はこれはモーニング娘。の初期もこういったところはあったと思います。ラブマシーンとか「日本の未来は〜」って歌詞の曲(曲名失念)なんかは、それが好き嫌いかはおいておいても、今でも多くの人が思い出せると思いますし、その時代の背景とかモーニング娘。っていう商品とかのイメージとも強く結びついていて、日本の文化の一時代は築いたと感じます。しかし、今となっては特に目立った活動が見受けられず、ニュースでワイドショーのネタになるのと、「オタクが聴く音楽」程度の認識であまり万人へのイメージの植付けに成功していない感じがあります。


また、多くのアーティスト(というか事務所やレコード会社)がヒットを生み出すために「子供だまし」の曲を過剰にかなり早いサイクルで提供し続けているように感じます。特に、パンクやミクスチャーといったジャンルはその歴史的な背景もあまり長くない上に一過性が強い(中学・高校くらいの反抗期とか)ので、案外と「その頃聴いてたけど今は聴かない」なんてことにもなりかねず、メジャーシーンで過剰に売っても結局持続性が生まれません。Hip-Hopやレゲエは海外でブームなので、まだまだ売れるのかもしれませんが、アンダーグラウンドシーンというのは年齢の規制という面や世間的な目などを気にする日本の文化においては、やはり爆発的な流行を生み出す若者(ティーンズ)向けではないと思うのです。しかもオジサン向けでもないですし。


そうして残ってくるのがヴィジュアル系モーニング娘。などのアイドルかジャニーズとなってくるのが、かなり悲しいですね。結局オタク頼みになるのが日本の産業ということなのでしょうか。少なくとも現状という意味ではそうなのかもしれません。普通のロック・ポップスシーンが残念ながらあまり元気ではないように感じます。


とにかく、今回言いたいのは、本気で子供向けの曲を作ってみてはどうだろうということだったりもします。「子供を騙す」音楽ではなくて、本気で子供向け。それが自然とできていたというかそんな感じだった(子供っぽい?)歌が意外とヒットを生み出していたんじゃないかなとか思ったりするわけです。


とりあえず、坂井泉水さんのご冥福を祈ります。